空調の効率は「実運転COP」で語れ!空調方式ごとの違いと地下水空調のメリット
COPとは?
COP(Coefficient of Performance)とは、定められた温度条件での消費電力1kW当たりの冷房・暖房能力(kW)を表した指標です。ほぼ全ての冷暖房機器のカタログに、この指標が表記されております。当然ながら、COPの数字が高いほど空調能力が高く、少ない電力で運用できるということです。
COPは空調機器メーカーの開発努力により少しずつ向上しているものの、基本的には空調方式および使用条件によっておおよその値が決まっています。そのため、COP特性を理解して、どの空調方式を採用するかを決めることが省エネ設計において重要です。
空調方式とCOP
①ボイラー
使用する熱源が燃料であったり電気であったりと様々ではありますが、基本的に与えた熱でそのまま水や空気を加熱しますので、COPは必ず1未満になります。様々な効率化や熱回収技術によって限りなく1には近づいていますが、与えた熱以上に加熱されることはありません。省エネの観点からはあまり高効率とは言えない機器です。ただし、エアコンには出せない高温に対応すること、エネルギーコストで見れば差は小さくなることから、適材適所で採用すべきものです。
②吸収式冷凍機・冷温水発生器
吸収式冷凍機とは、代替フロン等を用いず、水を冷媒として蒸発・吸収・再生・凝縮の4作用を経て、冷房する機器です。大型施設の集中型空調で用いられています。一般的に燃料で運転し、COPは1.0~1.5程度となります。エアコンに比べるとかなり小さい値ですが、ボイラーと同様に燃料コストで比較すれば、圧倒的に悪いということはありません。
③GHP
ガス・ヒートポンプの略であるGHPは、電気でコンプレッサーを駆動する一般的なエアコンに対し、ガス燃料でエンジンを駆動する仕組みのエアコンです。電気式のエアコンを、GHPに対してEHPと呼ぶ場合もあります。GHPのCOPも1.2~1.5程度が多いですが、後述する「実運転COP」が特に冬季で落ちにくいというメリットがあります。
④エアコン
一般的にエアコンというと、この電気式のEHPを指します。規模や形状などにより、パッケージエアコン、ビル用マルチエアコンなど様々なバリエーションがありますが、基本的な仕組みは同じで、代替フロンを圧縮・膨張させることで冷暖房を実現します。現在最も普及している空調方式であり、機器によって表記されているCOPも様々です。ほとんどの国産メーカーは3.5以上の数字を提示しており、中には6以上という驚くべき数字を載せているメーカーもあります。
出典:ダイキン社 VRV Xシリーズ ホームページより
カタログCOP(定格COP)と「実運転COP」の落とし穴
そんなに効率がいいなら最新のエアコンは極めて省エネなんだな、と考えるかもしれませんが、そこには落とし穴があります。このCOPとは、ある一定条件における性能を表しています。実はエアコンの仕組み上、外気温等によって効率は大きく変化します。外気温が高いほど冷房の効率は落ちますし、外気温が低いほど暖房の効率は落ちます。
その一定条件は、一般にJIS定格条件をもとにしており、冷房は外気温35℃、暖房は外気温7℃と定められています。このJIS定格基準で求められたCOPを定格COPと呼び、ふつうカタログ上のCOPはこの値を採用しています。
しかしここで疑問が生まれます。実運転におけるCOPはどれくらいになるのだろうか、と。
これが大きな問題となります。現在の日本は夏場に35℃を超えることは決して珍しくなく、もはや日常と化しています。しかも気象庁発表の気温は、直射日光や照り返しによる影響を受けにくい条件で計測しており、実際にエアコンが設置される場所の外気温は、気象庁発表の気温よりも高いことがほとんどです。
冬場も同様で、定格条件の7℃を下回る条件でも当たり前に暖房を使っているはずです。特に外気温が0℃に近づくと、室外機が凍ってしまいそれを融かすための「デフロスト運転」状態が起こります。デフロスト運転中は暖房が使えず、ただ電力を消費するのみです。カタログ上のCOPだけでは省エネ性能は測れないのです。
出典:ブログ「読みテレ 読んで楽しいテレビの話」より
どのくらい実運転COPは低下するのか
現在はより実運転条件に近い指標として、APFという指標も用いられます。APF(Annual Performance Factor)は一年を通して、ある一定の条件のもとにエアコンを使用した時の消費電力量1kWh当たりの冷房・暖房能力(kWh)を表示したものです。しかし、APFも現代の過酷な運転環境を反映させるには至っていません。むしろ中間期の低負荷状態を評価しており、実運転の条件からは解離しています。
出典:三菱電機ホームページより
新潟大学の赤林研究室では、COPを運転条件によってマトリクス評価する試みが行われています。これによると、酷暑期や厳冬期にどれだけCOPが低下するかがよくわかります。条件によってはカタログの定格COPから30%以上も悪化することになります。空調をどのような使用条件で運用するのか、省エネを実現するにはそこまで考えてあげる必要があります。
出典:日本冷凍空調工業会のホームページ
アクアグリーン・エターナルの自然エアコン
当社の自然エネルギー利用型エアコンは、地下水などの自然熱源を利用して空調を行います。基本的な動力は、送風ファンと揚水ポンプのみであり、極めて省電力です。冷房能力45kW程度の機種で、ファンの消費電力は約0.77kW。これにポンプの消費電力を加味しても2kW未満の消費電力に収まるため、COPは20以上という驚異的な数字となります。更に、「実運転COP」が外気温に左右されないため、常に一定の能力を発揮してくれます。
ぜひ空調をご検討される際は、方式によるCOPの違い、定格COPと実運転COPの違い、自然エネルギー空調のメリットを踏まえてご検討頂ければ幸いです。