再生可能エネルギー 地中熱・地下水活用(オープンループ方式)のメリット、課題、その解決方法
再生可能エネルギーである地中熱・地下水熱は「夏冷たく、冬暖かい」熱源
地温は一般的に、地域の年平均気温前後で安定するという性質があります。地表よりおそよ10m以深まで到達すれば、地表面の温度変化による影響を受けにくくなり、夏冬で温度がほとんど変わらなくなります。200m以上の深部まで到達すると、今度は地熱の影響により温度は上昇していきます。その中間となる10m~200m程度の深度においては、年間を通して一定の温度が得られるというわけです。地域により差はありますが、本州では概ね12~18℃程度となります。
これは夏の外気温に比べて冷たく、冬の外気温に比べて暖かい温度となります。これは特に空調の熱源として極めて優れており、うまく利用することで空調の省エネ化が図れます。
クローズドループとオープンループ(地下水熱活用)の違い
再生可能エネルギーである地中熱の活用方法は様々な方式が存在しますが、一般的なのはヒートポンプにより地中熱を回収し、求められる温度で供給する地中熱ヒートポンプ方式です。地中熱ヒートポンプ方式は熱回収の方式により更に2つに分類されます。
1.クローズドループ方式
現在、日本では最も普及していると言えます。地中に熱回収のための配管(Uチューブ等)を埋設し、そこに冷媒(不凍液)を循環させてヒートポンプに熱を送ります。冷媒の配管経路が閉じているため、クローズドループ方式と呼ばれています。
2.オープンループ方式(地下水熱活用)
この方式では、冷媒を用いずに地下水を汲み上げて、そのまま冷媒として用い、ヒートポンプへ地下水熱を送ります。地下水も地温とほぼ同じ温度になっているため、冷媒の代わりになります。熱を運んだ地下水は開放(地下還元や放流など)されるため、オープンループ方式と呼ばれています。
クローズドループとオープンループ(地中熱利用促進協会HPより)
再生可能エネルギー 地中熱・地下水熱の活用は高額!?その理由
図の通り、地中熱ヒートポンプといえばほぼクローズドループのことを指します。省エネ効果が高く、再生可能エネルギーの中でも場所を選ばずに導入できる点が魅力で、国の政策としても普及が期待されている熱源です。しかしまだまだ普及が進んでいるとは言い難く、その最大の要因は「高額」であることです。地中熱ヒートポンプ、特にクローズドループ方式が高額になる理由は以下に挙げられます。
1.配管埋設の費用が極めて高額
地中熱を冷媒で間接的に回収するには、想像以上に地中を長距離循環させなければなりません。ラフな計算では、暖房能力10kW(事務所20坪程度)に対し100m程度の地中総延長が必要となってしまいます。この掘削だけで数百万円かかってしまい、大変高額な空調となってしまいます。省エネによる電気代削減分を考慮しても、投資回収が20年以上かかってしまい、経済的にはデメリットでしかありません。現在ではこれを克服するために、掘削深度を浅くしたり、水平方向に埋設するなど工夫がなされており、補助金も手厚くなっていますが、それでも根本的な解決には至っておりません。
2.専用のヒートポンプが少ない
地中熱利用に用いられるヒートポンプは、空調や冷凍機で一般に使われる「空冷式」とは異なり、液体を熱源とすることから「水冷式」と呼ばれます。水冷式は特に日本では選択肢が少なく、更に地中熱利用に向いた機種を生産しているメーカーは数える程しかありません。市場としてもまだまだ成熟しておらず、機械本体の価格も、コストを高めてしまう要因の一つになっています。
地中熱ヒートポンプの普及状況(環境省,2017)
一方で、地下水熱利用(オープンループ方式)は、最も採算性の高い再生可能エネルギー
採算性という意味では導入が非常に困難なクローズドループ方式に対し、地下水熱を活用するオープンループ方式は、他の再生可能エネルギーと比較しても採算性に優れた方式です。その秘密は以下の通りです。
1.クローズドループ方式に比べ掘削コストが小さい
設備容量が大きくなるほど、比例して掘削コストも大きくなってしまうクローズドループに対し、地下水熱活用の場合は必要水量が確保できさえすれば良いので、大容量の設備であっても井戸1本+αで済んでしまいます。そのため掘削費用が圧倒的に安くなり、導入費用が抑えられます。
2.クローズドループ方式に比べより熱効率が良い
クローズドループ方式では、掘削コストと熱効率のバランスを取るため、どうしても冷媒温度は地温と同等までには達しません。そのため、本来は15℃前後の熱を活かしたいのに、数℃のズレが生まれてしまい、熱効率が上がり切りません。それに対し地下水を利用すると、地温そのままの温度でヒートポンプに供給されるため、温度ロスがなく最大限に効率を活かせます。
3.熱利用後の地下水を二次利用できる
熱を改修した後の地下水は、散水、潅水、消雪などに利用することができます。二次処理を行うことで、中水などへの利用も可能で、水道料金の削減や、災害時ライフラインの確保にも繋がります。
以上により、地下水熱利用(オープンループ方式)は、省エネ効果はもちろん、採算性においても優れた方式といえます。
地下水熱利用のための井戸掘削
地下水熱活用が進まない理由
上記の通り極めて優れた特性を持つオープンループ方式ですが、導入が進んでいないことからもわかる通り、いくつかの課題が存在しています。導入にあたっては、下記のような問題点を解決しなければなりません。
1.地下水の調査と規制対応
地下水の賦存量、水質、地盤状況は地域によって異なり、熱源として利用可能かどうかは事前に調査を行う必要があります。しかし、調査は専門家のノウハウが必要で、容易ではありません。
また地域によっては地盤沈下を考慮したり、自治体が独自に定めた条例に基づいて利用しなければなりません。
2.水質による機械の消耗(スケーリング)
地下水には、カルシウム、マグネシウム、シリカ、鉄分など、配管や熱交換器に付着してしまう成分が多く含まれています。これらが結晶化し付着することをスケーリングと呼び、機器の性能低下や腐食、破損を引き越します。これらの物質は除去に大がかりな設備とコストがかかるため、地下水熱利用のメリットを潰してしまうものでした。
3.対応機器の不足
上記2のスケーリング問題から、ほとんどの水冷ヒートポンプは水質基準を厳しく設定しており、実質的に地下水を直接使用することはできません。すると対策としては、コストをかけて溶存成分を除去するか、追加の熱交換器などで地下水が直接ヒートポンプに入らないように設計することになります。しかしこれらは、熱ロス・温度ロスを生み、設備費用を大きくさせ、クローズドループに対するメリットを打ち消してしまいます。そのため、これまでの地下水熱利用は、水質が極めて優れた地域でのみ行われてきたという現状があります。
スケーリングにより閉塞した配管
地下水熱利用をもっと多くの方々へ
当社では、地下水熱利用の問題点を解決し、より多くの方々に再生可能エネルギーである地下水熱利用の恩恵を受けて頂くため、様々な技術開発、ブレイクスルーを行ってきました。
1.地下水状況の無料調査と保証
当社は地下水の飲用化に長年取り組んできた経験とノウハウを活かし、井戸が今までなかった施設であっても無料で水源調査を行いつつ、地下水熱利用のシステムと井戸をセットでご提案することで、その保証まで可能としました。ご検討されている方の負担とリスクを最小限にするサービスです。
2.高耐久熱交換器の採用と触媒フィルター技術により、地下水の直接利用が可能
当社のヒートポンプや熱交換器は独自の製品で、SUS316やチタンといった高い耐久性、耐薬品性を誇る素材を採用し、スケーリングの起きやすい硬水地域でも長年利用されてきたものです。更に、世界8か国で特許取得された触媒技術を用いたフィルターを開発し、これらを一連のシステムとすることで、国内の多くの地下水質に対し、直接ヒートポンプに通水することが可能となっております。もちろん限界はありますが、その場合も薬品洗浄機構の搭載や、システムの工夫によりクリアでき、より水質の厳しい温泉水や排水、塩水であっても利用可能なほど耐久性の高いものとなっています。
3.熱源から機器ユニットまでを一体設計
これまでは井戸掘削業者、ヒートポンプメーカー、設備設計などがそれぞれ活動することで、全体での最適化、保証が難しく、結果として導入が困難となったり、設備が高額になってしまいっていました。当社ではそれらを一体で設計することが可能で、無駄のない提案が実現しています。
4.補助金申請のサポート
地下水熱も再生可能エネルギーの1つです。現在は経産省、環境省などの補助金を利用し、導入費用の補助が受けられます。当社では申請資料の作成から報告までのサポート業務を行っており、これまでの採択率は100%です。(2018年2月現在)
再生可能エネルギーで省エネを実現!地中熱・地下水熱を有効に活用ください
多くのメリットを持つ再生可能エネルギーを利用した地下水熱利用が、より多くの方々の経営、生活を助けるようになることが当社の願いです。
持続可能な社会開発、持続的な経営戦略のために、ぜひ地下水熱の活用をご検討下さい。