第11章 破産のあと、なぜ再び立ち上がれたのか

破産という言葉は、
単に金を失うことではない。

信用を失い、
積み上げてきた過去を否定され、
未来を一度、手放すことだ。

私は、その只中にいた。

韓国の企業に支えられ、
かろうじて生活は成り立っていた。

だが、そこに「未来」はなかった。

そんな時、一人の男が現れた。

外資系コンサルティング会社出身の経営者。
人の本質を見る、不思議な力を持つ人物だった。

彼は私の過去の仕事を静かに聞き終えると、
すぐに動いた。

三社の顧問契約。

月額五十万円、月三日の支援。
そこに成果報酬が加わる。

気がつけば、
私の収入は月二百万円に戻っていた。

破産から、まだ二年も経っていない。

だが――

金が戻っても、
自信は戻らなかった。

その頃、もう一人の人物がいた。

成城でパワーストーンの店を営む女性。
霊能者としても知られる、静かで繊細な人だった。

彼女は言った。

「九州へ行きなさい。火の力を受けてきなさい」

理由はなかった。

だが私は、動いた。

宗像大社。

海とつながる神域。
古来より祈りが重ねられてきた場所。

そこから宇佐神宮へ。

広大な境内。
時間の流れが違う場所。

本殿まで、あと十メートル。

その時、電話が鳴った。

城井だった。

「一緒にやりたい」

私は断った。

まだ、その時ではないと感じたからだ。

翌日。

別府。

妻が子どもの頃、遊んでいたという
水で知られる浅見八幡。

再び、本殿へ向かう。

また、あと十メートル。

また、電話。

城井だった。

同じ言葉。

私は、また断った。

三度目。

佐賀、呼子。

妻に烏賊を食べさせた帰り。

山の中腹にある、静かな神社。
弁天を祀る厳島神社。

酒を供え、
静かに手を合わせる。

祝詞を開いた、その瞬間。

電話が鳴った。

三度目だった。

その時、確信した。

これは偶然ではない。

選べ、と言われている。

私は電話に出た。

「わかった。一緒にやろう」

ただし条件がある。

給料は前払いで出す。
払えなくなったら、それを退職金として受け取ってくれ。

私はまだ、自分を信じ切れていなかった。

だが――

彼を信じることはできた。

こうして、再び歩き出す。

株式会社エレメンタルエコシステム。

ゼロからの出発だった。

その後の二十年。

挫折。
また挫折。

何度も倒れた。

それでも、不思議なことに

金は回り、
人は現れ、
道は途切れなかった。

神がいるのかどうか、
それを証明することは、私にはできない。

神は見えない。
隠れ身であると言われる。

そして人は、限りある存在だ。

だが私は、
見えざるものの存在を、信じることができる。

なぜなら、
何度も「試されてきた」と感じているからだ。

追い込まれ、
限界に近づき、
もう一歩も進めないと思ったその時――

不思議なことに、
ほんの少しだけ、道が開く。

まるで、

「まだ終わりではない」

そう告げられているかのように。

それは大きな奇跡ではない。

だが確かに、
人が立ち上がるには十分な“何か”だった。

あの三度の電話。

あの十メートル。

あの選択。

もし、あの時――

出ていなかったら。

今の私は、いない。

人は偶然で生きているのではない。

選択で、生きている。

そしてこの選択が、

次の物語を呼び込む。

城井との挑戦。

理想と現実の衝突。

そして、再びの挫折。

だがその先に、

一筋の光が差し込む。

雪国、新潟。

虹のように、
遠くにかかる一つの橋。

そこへ、向かう。

もう1つ  新潟への虹の架け橋 城井は 1万人の企業グループの 100%子会社社長として 上司にグループオーナーを 担ぎ 成功を収めてゆくが  しかし   城井との挑戦と崩壊 ― そして、新潟へ
あの三度の電話のあと、
私は城井と共に、新しい会社を立ち上げた。

株式会社エレメンタルエコシステム。

資本は私が出した。

だが、社長は彼に任せた。

若く、未来がある。
銀行との関係も、その方が良い。

そして何より――

私はもう一度、
「人を信じてみよう」と思った。

最初は、夢しかなかった。

新しい技術。
新しい市場。
新しい可能性。

大手企業の元社長も資本参加した。

誰もが、
「これはいける」と思っていた。

だが、現実は違った。

その中心にいた技術者。

微弱エネルギーを語る男。

未来を語り、
理論を語り、
希望を語った。

だが――

それは、嘘だった。

事業は崩れた。

一つ、また一つと、
積み上げたものが崩れていく。

信じたものが、
音を立てて壊れていく。

城井は、まだ若かった。

理想を信じていた。

だが現実は、
容赦なくそれを砕いた。

「なぜ、こうなるんですか」

彼のその言葉に、
私は答えられなかった。

経営とは、
正しいことをすれば成功する世界ではない。

信じるだけでも足りない。

見抜かなければならない。

守らなければならない。

決断しなければならない。

そして何より――

責任を取らなければならない。

会社は、止めた。

休眠という形で、
いったん幕を下ろした。

だが、その崩壊の中で、
一つだけ、残ったものがあった。

いや――

見つかった、と言うべきかもしれない。

本物の技術。

世界特許を持つ、触媒フィルター。

それは、静かにそこにあった。

嘘の中に、
本物が埋もれていた。

私は思った。

「まだ終わっていない」

その頃、新たな機会が現れる。

新潟。

社員一万人を抱える企業グループ。

新規事業の公募。

私は応募した。
城井も応募した。

別々に。

私は二次審査で落ちた。

城井は――

五次審査まで通過した。

そして彼は、

そのグループの
100%子会社の社長に抜擢された。

会長には、
グループのオーナー自らが就任した。

本気だった。

この事業に、
未来を見ていた。

私は、非常勤の技術部長として加わった。

事業の軸は、
地下水の膜処理による飲料化。

かつて私が成功させた技術だった。

だが、ここでも現実は壁となる。

幹部たちの反対。

安全性。
責任問題。

計画は、進まなかった。

試行錯誤。

迷い。

停滞。

その時、私は気づく。

「水は、もう一つの顔を持っている」

地下水は、
ただの水ではない。

温度を持っている。

年間を通して、約15度。

冷たくもなく、
熱くもない。

だが――

だからこそ、使える。

冷房にも、暖房にも。

自然の熱源として。

この発想が、
すべてを変えた。

老健施設。

このグループが多く持つ施設。

水道代よりも、

お湯、空調、エネルギー。

そこに大きなコストがあった。

地下水を使う。

それだけでいい。

事業は動き出した。

補助金も追い風となった。

国内初の実績。

ニュービジネス大賞。

政府系金融機関の資本参加。

新潟県で初めてのケースだった。

成功。

確かに、そう呼べる状態だった。

だが――

成長は、
常にリスクを伴う。

案件は一億円規模。

工事。

システム。

現場。

そして、トラブル。

赤字。

さらに追い打ちをかけるように、

グループ全体に問題が起きる。

オーナーへの政治的追及。

公的資金の問題。

資金が必要な、その時に――

止まった。

事業は、停止した。

私は、新潟を離れた。

自分の会社へ戻るために。

城井もまた、

一年の役目を終え、
その場を去った。

すべてが終わったように見えた。

だが、違った。

技術は残った。

経験も残った。

そして何より――

人が残った。

挑戦は、
決して無駄ではなかった。

あの崩壊があったからこそ、

本物と、偽物を見分ける力がついた。

そして、
次の道が見え始めていた。

雪国、新潟。

厳しさの中に、
確かな力を育てる土地。

その経験は、

やがて、
世界へつながる流れの中に組み込まれていく。

すべては、
つながっている。

そして私は、

再び歩き出す。

続く

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