神奈川県における地下水活用・地下水熱利用の概況

神奈川県における地下水利用・地下水熱利用の概況

地下水利用・地下水熱利用を進めるにあたり、最も重要なのは地下水の賦存状況です。
当ページでは、神奈川県における地下水事情と、地下水関連の有用サイトをまとめております。

※当情報は2019年3月現在の情報です。また一部を簡略化しております。
また、温泉井戸に関する温泉法の情報は除外しております。
ご検討の際は行政ホームページで最新の情報をご確認ください。

地下水利用における条例

はじめに確認すべき情報は、自治体毎の地下水汲み上げに関する条例です。
地下水利用時は、この条例に基づき、届出等を行い、採取量や井戸口径などを遵守する必要があります。

神奈川県では、「神奈川県生活環境の保全等に関する条例」(県条例)により、一部の地域を「指定地域」として地下水採取の規制を行うとともに、指定地域の周辺地域における地下水採取量の報告等を義務付けてます。
また横浜市、川崎市では市町村条例、及び工業用水法による規制を受けます。
その他、一部の市町村では独自の条例を制定し、地下水保全に努めています。
市町村条例がある場合は、県条例の対象外であっても市町村条例を遵守する必要があります。

●指定地域: 平塚市、茅ヶ崎市、海老名市、寒川町、厚木市(一部)
●周辺地域: 鎌倉市、藤沢市、厚木市(指定地域以外)
●市町村条例・工業用水法: 横浜市、川崎市
●その他、市町村条例を制定する地域:小田原市、秦野市、海老名市、座間市、南足柄市、中井町、開成町、真鶴町


出典:神奈川県ホームページ(http://www.pref.kanagawa.jp/)

●県条例指定地域・周辺地域共通:地下水採取量等の報告等
指定地域内及び指定地域の周辺地域内で、揚水機の吐出口の断面積の合計が6㎠を超える(実質32A以上)施設が対象となります。
 *揚水施設(井戸)が複数ある場合は、全ての吐出口の断面積の合計値

対象となる施設では、井戸の設置にあたり一定の基準を満たし、知事の許可を得る必要があります。
また設置後は測定・記録・報告の義務が発生します。

<井戸の許可基準>
○許可の基準
原則として次の基準すべてに適合することが必要です。
① 揚水機の吐出口の断面積の合計が22㎠以下であること。
② 揚水機のストレーナーの地表面からの位置が100mより深いこと。
③ 揚水機の原動機の定格出力が 2.2kw以下であること。
 (井戸の全揚程が50m以深の場合は 3.7kw以下であること。)

<測定・記録・報告>
指定区域:地下水の摂取量、揚水水位、自然水位、
      特別水位(8月10日及び16日、12月29日及び翌年1月4日の水位)
      自由地下水位(採取量250㎥/日以上のものに限る。)

周辺地域:地下水の採取量

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●市町村条例における地下水採取の規制
ここでは横浜市、川崎市の条例について取り上げます。

<横浜市>
生活環境条例、及び工業用水法による規制を受けます。

生活環境条例:横浜市全域
工業用水法:鶴見区、神奈川区のうち京急本線以南の地域
 *工業用井戸で工業用水法対象区域にある井戸には工業用水法が優先されます。

届出・許可が必要な基準
・揚水機の吐出口の断面積の合計が揚水施設(井戸)を6㎠以下(実質25A以下) →届出のみ
・揚水機の吐出口の断面積の合計が揚水施設(井戸)を6㎠より大きい(実質32A以上) →許可制

許可基準:横浜市全域(王業用水法対象井戸を除く)
① 揚水機の吐出口の断面積の合計が22㎠以下であること。
② 揚水機のストレーナーの地表面からの位置が100mより深いこと。
③ 揚水機の原動機の定格出力が 2.2kw以下であること。
 (井戸の全揚程が50m以深の場合は 3.7kw以下であること。)

許可基準:工業用水法対象地域
① 揚水機の吐出口の断面積の合計が46㎠以下であること。
② 揚水機のストレーナーの地表面からの位置が90m以深であること。

また横浜市全域で、設置後は揚水量等の報告義務が発生します。

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<川崎市>
生活環境条例、及び工業用水法による規制を受けます。

生活環境条例:川崎市全域
工業用水法:東急東横線以東の地域(下図参照)
 *工業用井戸で工業用水法対象区域にある井戸には、工業用水法が優先されます。


出典:川崎市ホームページ(http://www.city.kawasaki.jp/)

届出・許可が必要な基準
・揚水機の吐出口の断面積の合計が揚水施設(井戸)を6㎠以下(実質25A以下) →届出のみ
・揚水機の吐出口の断面積の合計が揚水施設(井戸)を6㎠より大きい(実質32A以上)
 または1カ月の平均揚水量が平均で50㎥を超える場合 →許可制

許可基準:川崎市全域(工業用水法対象井戸を除く)
① 揚水機の吐出口の断面積の合計が21㎠以下であること。
② 揚水機のストレーナーの地表面からの位置が300m以深であること。

許可基準:工業用水法イ地区
① 揚水機の吐出口の断面積の合計が46㎠以下であること。
② 揚水機のストレーナーの地表面からの位置が90m以深であること。

許可基準:工業用水法ロ地区
① 揚水機の吐出口の断面積の合計が46㎠以下であること。

また設置後は川崎市全域で、届出のみの井戸は揚水量を、許可を受けた井戸は揚水量と水位の報告義務が発生します。

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<その他の市町村>
各市町村にお問い合わせください。

<リンク>
神奈川県地下水採取規制に関する条例等(環境省)
https://www.env.go.jp/water/jiban/sui/j14.html

神奈川県生活環境の保全等に関する条例
http://www.pref.kanagawa.jp/uploaded/attachment/869932.pdf

横浜市 地下水規制の概要

https://www.city.yokohama.lg.jp/business/bunyabetsu/kankyo-koen-gesui/kiseishido/dojo/jiban/chikasui.files/0001_20180830.pdf

川崎市 地下水規制の概要

http://www.city.kawasaki.jp/300/cmsfiles/contents/0000027/27034/H28.5refkaitei.pdf

排水に関する条例・規制

●放流水の水質基準
工場・事業場で使用した地下水を、側溝・河川等に放流する場合は、「水質汚濁防止法」及び県条例、市町村条例(横浜市、川崎市)における水質基準を遵守することが必要です。
地下水そのものが基準値を超えることは稀ですが、土壌汚染由来の汚染物質が流入しているケースもあり、事前に確認は必要となります。
各自治体で地下水汚染が確認された場合はデータを公表しています。

●下水道への放流と下水料金
下水道に使用した地下水を放流する場合、放流量に応じた下水道料金が発生します。
地下水を上水として使用する場合は、原則的に取水量メーターを基準に下水道料金を判定します。
ただし熱源として使用した地下水を側溝・河川等に放流する場合は、事前に自治体へ確認のうえ、
下水料金にカウントさせないことが可能な場合が多いです。

●その他
地域によって、組合等で独自のルールを設けている場合があります。
農業組合、温泉組合、工業団地などに影響する場合はご注意ください。

<リンク>
神奈川県 排水基準
http://www.pref.kanagawa.jp/docs/pf7/suisitu/haisuikizyunn.html

地下水の賦存状況

神奈川県は関東平野の南西部に位置し、北は首都東京都に接し、東は東京湾に、南は相模湾にそれぞれ面し、西は山梨、静岡の両県に隣接しています。北西部には丹沢や箱根の山地をひかえ、県全域で地下水が比較的豊富な地域です。現在も、上水道の水源として地下水を利用している地域も多く存在します。
しかし、臨海部の工業地域を中心に、高度成長期の過剰な汲み上げによって地盤沈下が発生したことから、上述のような厳格な規制とともに、自治体によるモニタリングが行われてきました。
現在では地盤沈下も沈静化の傾向にありますが、地下水利用の際には法令遵守の上、沈下リスクを考慮した井戸設計が求められます。
適切な計画の範囲においては、非常に水資源に恵まれた地域として、地下水の利用は有効な地域です。
水質・深度は地域によってまちまちで、飲用適合の水質の地域もありますが、独特の条件もあります。
事前に専門家による確認が必要です。

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