Chapter 4: The Boy's Dream of Watching the Sea

海を見ている時間が、私は好きだった。
釣りをしているときも、
魚がかかるのを待ちながら
よく遠くの海を眺めていた。
水平線の向こうには
何があるのだろう。
子供の私は、
そんなことをぼんやり考えていた。
特別な夢があったわけではない。
「将来こうなりたい」
そんなはっきりした目標を
持っていたわけでもなかった。
ただ、
海を見ていると
心が静かになった。
広い海を見ていると、
世界はとても大きくて
自分の悩みや
小さな不安は
その中に
溶けていくように感じた。
あのころの私は
体が弱く、
ときどき
自分は長く生きられないのではないかと
子供ながらに思うこともあった。
夜、発作で苦しみながら
呼吸ができなくなる恐怖を
何度も経験していたからだ。
だからかもしれない。
元気に外で遊べる日には
それだけで
とても嬉しかった。
海に行き、
釣りをして、
風の音を聞きながら
波を眺める。
それだけで
十分だった。
少年の私にとって
海は遊び場であり、
そしてどこか
心を守ってくれる場所でもあった。
そして不思議なことに
今振り返ると、
私の人生には
いつも「水」があった。
温泉の町に生まれ、
海で遊び、
川で釣りをし、
家の風呂も温泉だった。
当たり前のように
水のある環境の中で
私は育っていた。
そのときは
もちろん気づかなかった。
この「水」が
やがて自分の人生の仕事になり、
さらに
多くの人の暮らしに関わる
大きなテーマになっていくことを。
少年はただ
海を見ていただけだった。
しかし
人生というものは不思議で、
その静かな時間の中に
未来の種が
すでに蒔かれていることがある。
あのころの私は
何も知らなかった。
ただ
海の前に座り、
釣り竿を握りながら
広い水の世界を眺めていた。
しかし
その水の世界は
やがて
私を仕事へ導き、
仲間と出会わせ、
そして
新しい未来へと
つながっていくことになる。
少年のころ
ただ好きだった「水」は
いつしか
私の人生そのものに
なっていったのである。



